日本には、各地に数々の名産品があります。例えば、福井のメガネや佐賀の陶磁器などは、よく知られるところです。もちろん、タオルにも代表的な産地とされる場所が存在します。主には二つの産地が有名で、一つはウエノがある大阪府の泉州エリア、そしてもう一つは愛媛県の今治です。
先にタオルを産業として確立させたのは、泉州でした。明治20年(1887)、当時輸入品だったタオルを機械での製織に初めて成功させたのが、泉州の白木綿業者だった里井圓治郎。泉州は豊かな水に恵まれた地域で、かつては紡績業も栄えていました。そうした風土は、タオル作りに通じるものがあったのかもしれません。
かたや今治も豊かな水源を誇る土地。良質な水のおかげもあり、タオル産業が盛んになりました。その歴史も120年以上に及びます。
同じようにタオルを製造してきた泉州と今治ですが、それぞれに特徴を持ち、作り方にも違いがあります。
泉州タオルは、一般家庭用のほか業務用などの需要も多く、実用性重視で発展してきました。見た目にもかつてはシンプルな無地が中心で、どちらかというと普段使いのイメージでした。今治タオルは、ジャカード織によって柄物を多く生産し、贈答用などで販路を広げてきました。
生産の技法では、泉州タオルは「後晒し」を採用。糊や糸そのものに付着する不純物、油分などを織り上がった後に取り除き、漂白・水洗いする工程です。後から晒すので、下ろしたてでも清潔感があるのがポイント。一方、今治タオルは綿本来の柔らかさを引き出すよう、泉州とは逆に「先晒し」で作られています。
近年、タオル業界も海外へと生産拠点を移す企業が多くなり、「MADE IN ○○(海外の国名)」の表示が多く見られます。これらは国産品に比べると価格が安いので、ついつい選んでしまいがち。でも、タオルのお仕事をしている私としては、一度泉州や今治のタオルも使ってほしいと思っています。肌触りや吸水性の良さ、しっかりした縫製など、長年の歴史の中で培われた技術が生み出す素晴らしさをきっと実感いただけるはずです。
毎日使うタオルだからこそ、あるいは大切な方に贈るものだからこそ、信頼性の高い国産品をお試しいただけたらと思います。
泉州タオル工房はこちら
https://www.towel-kobo.jp
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